10年にも渡りお弁当の配達先で高齢者の方々を撮影するという、生活の中にあるリアルを切り取った「弁当 is Ready」。この作品に込めた想いや撮影のエピソード、堀内カラーの出力などについて、福島氏にお話を伺いました。
左から、福島さん / 堀内カラー 石橋
撮影で一番大事にしていたのは
「臨場感」と「追体験」。
「臨場感」と「追体験」。
昨年のKG+では展示のスペースにも限りがあったので、あまり深い部分までは表現できなかったのですが、今回は町家を2棟お借りして展示することができたので、足掛け10年間撮影してきた僕のストーリーを、前回よりも皆さんに感じとっていただけていると思います。この撮影において、僕が一番大事にしていたのは「臨場感」と「追体験」です。僕は事前にコンセプトを決めてそこから撮影するのではなく、現場で撮影を始めてから、写真を撮って感じたことや、その写真を撮ることによって自分の人生にも変化を感じながら、最終的に自分の答えを探していくというスタイルで撮影をしています。今回はスペースがいっぱいあったので、見ていた だく人にも、僕がしてきた経験を追体験していただける内容になっていると思います。
自分の日常にすることで、
自然に撮れるようになった。
自然に撮れるようになった。
撮影のキッカケは、店長の「お客さんの写真を撮ってみたら」というひと言でした。でも、それはきっとお客さんのニッコリした笑顔を撮ってそれをプレゼントするという意味合いだったと思うんです。次の日からカメラを首からぶら下げて配達に行きましたが、リアルな暮らしは衝撃的で、とても笑ってくださいなんて言える状況ではありませんでした。結局、声をかけることができず、半年間一枚もシャッターを切れませんでした。でも、カメラをぶら下げていることで僕自身にキャラクターがつき、だんだんとお客さんと会話ができるようになっていったことで、いつの間にかお客さんの日常に僕も入れたというか、それが僕の日常にもなったことで、自然に撮れるようになりました。
伝えたかったのは、
それでも生きていくという
力強さ。
それでも生きていくという
力強さ。
堀内カラーさんからテストプリントを見せていただいたとき、撮影が終わってから5~6年経っているんですけれども、撮影当初の匂いだったりとか、緊張感みたいなものが蘇えってきました。配達先で真っ暗なお宅にガチャッと入るとき、もしかしたら亡くなっているかもという思いもあり毎回すごくドキドキしていて、プリントと対面したとき、あのときの緊張感が自分の中でいっきにフラッシュバックしました。撮影時には実際に目を背けたくなるようなことも経験しましたが、今回の展示では、高齢者の日常を可哀そうな状況で終わらせるのではなく、それでも生きていくという力強さを伝えたかったので、それにはプリントの力がすごく大事だと思っていました。そのことを堀内カラーの石橋さんにもお話をして、(辛い状況下でも)生きているというパワフルな生命力を活かして見る人の印象を力強いものに変えていこうと方向性が決まり、影の部分をしっかり見せることで生命力がより際立つ作品に仕上げていただきました。時間のないなかでこれだけの枚数を仕上げていただいて本当に感謝しています。
石橋のコメント
しっかり見せることで、
生命力がより際立つ作品に。